肥満と生活習慣と健康
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肥満と生活習慣と健康
人間には【セットポイント】と呼ばれる基準点があります。例えば、体重が70Kgの人が、ちょっと食べすぎて72Kgになったとしても、大抵は1週間もしないうちに元に戻ります。逆に風邪をひいて食べられなくなって68Kgになったとしても、食欲が改善すればまた元の70Kgに戻ります。
脳の視床下部は、セットポイントをコントロールし、現在の蓄積されている脂肪量に応じて食事の量や行動を調整しているのです。
このセットポイントの維持のためにはさまざまなホルモンが役割を果たします。そして、そのコントロールしようとする働きは減量を達成して約1年経過してもまだ続いているのです。
食欲を増大させるホルモンに【グレリン】というものがあります。グレリンは、主に胃の神経内分泌細胞から分泌され、胃腸の運動を活発にして食べ物の摂取を強力に増加させようとします。
朝一番には【グレリン】レベルが上昇しています。朝おきた時に「お腹が空いたな、何か食べたいな」と思わせているのは【グレリン】なのです。当然グレリンのレベルが高ければずっと何かを食べたいと考えますし、意思の力で押さえ込むことができなければ実際に食べてしまうことになります。
ある研究の減量後62週間後の【グレリン】の変動を確認すると、体重減少前よりも食事前のグレリン値は高い状態でした。食後2時間後再び上昇するグレリンの値も体重減少前よりも高く、空腹感や食欲も減量後の方が高いという結果になった。減量に伴う基礎代謝率の低下も同じく1年経っても低下したままだった。
そのため、減量を達成しても体が元の体重に戻そうとする強力な誘惑があるのです。それに打ち勝つ強い意志の力を持つ人しか、ダイエットできないことになります。実際、多くの人がダイエットに失敗します。もしくは、成功しても結局リバウンドしてしまいます。意思が弱いとか生活習慣がだらしないというよりも、あなた自身の体がそうさせているのだから仕方ないのです。(わたしは強い意志で余裕で減量できます笑)
根本に立ち返ってみると、そもそもセットポイントがあるのにどうして太ってしまうのでしょうか❓❓通常太ろうとしても、なかなか太ることはできません。
ある研究で痩せ型の人に対し、6ヶ月間過食することで体重を20%増加させるという課題が与えられた。体重の20%増加に達し、研究から開放されると参加者は数週間にわたる重度の食欲不振を示し、みるみる体重が減少した。
体重が以前の値に近づくと、食物摂取量も通常のレベルに戻る。このように通常体重のセットポイントを変更することは困難なのです。セットポイントが上昇し肥満となってしまう病因は、エネルギーシステムの障害があるからなのです。
内臓脂肪=慢性炎症
健康について話しをする時だいたいの人は、その部位に原因があると思っているし、そう言われると思います。例えば、「頭が痛いのは頭に原因がある」「お腹が痛いのはお腹に原因がある」「腰が痛いのは腰に原因がある」など。外的要因ならその部位の痛みはそれが原因でしょうが、身体は【有機的な集合体】です。身体のパーツはすべて、独立して機能している部分は一つもありません。ホルモン、伝達物質(サイトカイン、神経伝達物質)、多くの微生物のネットワーク(マイクロバイオーム)を介してすべて繋がっているのです。見えている身体の不調はほんの一部にすぎません。本当の病気の真の原因は大きく隠れているのです。
その真の原因は【慢性炎症】です
身体の中に慢性の炎症があると、さまざまな部分に異常が表れます。「消化吸収」「ホルモン」「免疫」などのあらゆる機能不全を引き起こします。そして人によっては、血圧が上がったり、脂質代謝異常が出たり、血糖値が上がったり、骨がもろくなったり、うつ病になったり、そしてがんが顕在化します。また【慢性疲労】があると免疫細胞の機能が低下し、すぐに風邪をひいたりします。
そしてこの【慢性炎症】を起こしている状態は血液検査でしかわからない、というわけではありません。一番簡単な確認方法は、【内臓脂肪】がたっぷりついているかどうかなのです。
もしあなたに【内臓脂肪】がたくさんついているのなら、あなたの身体には【慢性炎症】があります。その【慢性炎症】が原因で痩せることが難しく、太ったままになるのです。【慢性炎症】があればあなたの免疫力はあなたが本来持っている免疫力より確実に低下しています。
健康とは
内臓脂肪は女性では少ないですが、男性では30代以降急激に増えていきます。俗に言うビール腹と呼ばれるお腹だけぽこりと出た状態は典型的な内臓脂肪過多です。
この状態になっている時は、同時に腹直筋や腹斜筋と呼ばれる腹部の筋肉の萎縮を伴います。筋肉が萎縮しているため、だらしなくお腹が出てしまうのです。
さて皆様に質問です。健康とはどういうことでしょうか❓❓
健康とは身体的、社会的、精神的に満たされていること。そして、身体の一つ一つの細胞が元気に活動していることなのです。では、細胞が元気な状態とはどういう意味でしょうか❓❓
【必要な栄養素を取り入れること】【不要物を排出すること】
細胞の異常の究極体は、【がん】です。がん細胞は細胞同士のネットワークを無視して自由気ままに増殖します。このような異常な細胞は免疫機能が正常に働けば即座に破壊されます。人の身体には毎日なんらかの異常を起こした細胞が生じており、免疫細胞が処理しています。免疫能力が正常に保たれていれば、がんが生じる可能性は理論上ないのです。
生活の積み重ねが身体をつくる
免疫機能が低下する理由は何か❓❓
これまでは、がんは遺伝的要素が高い疾患であると考えられてきました。しかし、がんは生活習慣病であり、その90%〜95%は生活スタイルを変えることで予防できるのです。
生活スタイルを変えるにはどうしたらよいでしょうか❓❓
・いつも何を食べていますか❓
・運動は毎日していますか❓
・睡眠時間はしっかり確保していますか❓
・ストレスとうまく付き合っていますか❓
これらの一つ一つの積み重ねが生活スタイルを作っています。生活スタイルの変更は時間をかけてじっくり取り組む必要があります。何か健康にいい食品やサプリを摂るだけでは、絶対に良くならないのです。
終わりに
肥満と生活習慣と健康は密接な関係があるのが、お分かり頂けたでしょうか。
人間は本来115歳まで生存できるという研究結果があります。115歳まで生きれる人は稀ですので、多くの人は本来の老化スピードよりも早く老化していることになります。生活スタイルを変えずに生活していると、5年後の細胞は10歳以上老化しているかもしれません。
生活スタイルの改善を今始めることが重要です。あなたが何歳であったも開始するのは今です。年齢に関係なく生活スタイルを変えれば身体は変わります。75歳以上であったも筋力は強化できるのですから。
細胞一つ一つが元気であれば、その集合体であるあなたの身体が肥満になることはありません。同じく血圧が上がったり、血糖値が上がったり、中性脂肪が上がったり、骨がもろくなったり、認知機能が低下したり、がんになることもありません。何度も言いますが、【肥満】であることは決して【健康】ではないのです。
健康な身体であれば肥満になることはないし、健康的な生活スタイルを送れば自然と【肥満】は解消されていくのです。
短期的な思考でただ体重を減らすことをしても身体はダメージを受けるだけで、健康にはなっていません。以前の生活に戻るとすぐに元の体重に戻るだけです。決して痩せることをゴールにしないでください。